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理念と経営2009年9月号にてシアターハウスが紹介されました

理念と経営2009年9月号にてシアターハウスが紹介されました

企業事例研究

起業の動機は、迫力ある映画を家庭で観られるようにということだった。
福井市内でフルハイビジョン対応のスクリーンなど、
ホームシアター用設備の製造販売をしている会社
株式会社シアターハウスは起業してまだ10年足らずだが、全国の家庭やオフィスに「スクリーン革命」を起こしている。

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機屋の技術を活かして
思い通りのスクリーン開発に成功
その結果、起業につながった

起業の動機は、迫力のある映画を家庭で観られるようにということだった。福井市内でフルハイビジョン対応のスクリーンなど、ホームシアター用設備の製造販売をしている株式会社シアターハウスは起業してまだ一〇年足らずだが、全国の家庭やオフィスに「スクリーン革命」を起こしている。

代表取締役の吉村明高さん(一九五九年生まれ)が「大画面のスクリーンを友人の家で観て、その迫力に感動した」のは、二〇〇一(平13)年のことである。さっそくプロジェクターとスクリーンを買って家で映画を楽しみはじめたが、だんだん不満を感じはじめた。使い勝手の悪さとか、画面の鮮明度とか、皺のこととか、あるいは大きさといった「スクリーン」にまつわるさまざまなことである。

自分で作ってみようと思ったのはそのときだった。お父さんの代からの家業は機屋である。糸を布にするのが仕事だ。つまりもともと「布」を加工するのはお手の物だった。それまでにも自分で開発した女性向けの服地を織っていた経験もあるのでスクリーンの開発には自信があった。そしてなによりも面白そうだった。そのように始まって、自分で工夫して思い通りの画面を作ることに成功した。その結果が起業につながったのである。

「ひょっとしたら他にも欲しいと思う人がいるかもしれない」と考え、ヤフーのオークションに出してみたら個人が買ってくれた。まだ趣味の範囲だったが、「これはビジネスになる、と思って本格的に立ち上げたら、一ケ月で二○○万円を超える売り上げになり、瞬く間に本業を超えた」とのことである。

その時に考えたことは「自分と同じように思い通りの画面を手に入れることができずにいる映画好きの人たちに、最高のスクリーンを提供しようという」ことだった。「美しい映像を得るための妥協を許さないスクリーン生地へのこだわり。お客様の求めるシアター環境に限りなく近づけるための独自サービスなど」を考えて、吉村光学研究所を立ち上げたのが二○○一年(平13)年の八月のことである。ちょうど個人の家や、大規模なマンションで大画面ホームシアターが流行しはじめたときでもあった。

ニーズにマッチした品物は
不景気でも売れる、ということの
典型がここにある

「鮮明な画面。扱い易さ」を考えて作ったが、念頭にあったのはあくまでも「映画」の鑑賞である。しかしスクリーンが売れはじめ、さまざまな反響が集まりはじめた。用途が(考えたら当たリ前のことなのだが)思いがけず広がっていたのである。それはパソコンの普及により、会議のプレゼンテーションなどで、プロジェクターによる説明が一般化していたことである。そこから大きなマーケットとしての法人需要につながったのである。

それまでの家業だった「機屋」をたたんだのは半年後である。取引先の都合もあるので「突然明日から」というわけにはいかなかったのである。

吉村さんの会社は、二○○一年八月に吉村光学研究所を設立し、二○○三年九月に株式会社ピュアビジョンに組織変更。二○○四年二月から現在の株式会社シアターハウスになった。

それからずっと、シアターハウスは年に六パーセントから二〇パーセントと(その年によって波はあるのだが)成長を続けている。とくに驚くべきなのは、売り上げにかかわる数字が「世の中の景気と無関係」であることだ。例えば設立した二○○一年を振り返ってみればよい。日本中がITバブルの崩壊で不況の底に沈んでいだときである。景気動向が条件ならばとても開業・起業といった環境ではなかった。

今年の状況はもう言うまでのないことだが、昨年秋のリーマンショック後の大型不況もシアターハウスには及んでいないのである。

ニーズにマッチした品物は不景気でも売れる、ということの典型がここにある。

クルマや半導体関連に限ることなく製造業の世界は、昨年の暮れから仕事が八○パーセントなくなってしまった、といった声は普通なので、この会社の成長力は際立っているといえるだろう。

支払いのよい取引先を優先する
ビジネスの原則において、
手形はなく、すべてが「現金決済」

シアターハウスが作っているスクリーンの画面は、二○○インチといった巨大サイズもあるが、小さなものが八○インチ(畳一枚分)で、一○○インチから一一○インチといった大きさが標準サイズとのこと。工場の一角にある吉村社長の個人シアターというか、デモンストレーション用の、一○○インチの画面で試写を見せてもらったが、その迫力にはびっくりした。

スクリーンは掛け軸のようになっていて、手動式もあるが、電動リモコンもある。価格は六万円からだが、この会社の価格設定は単純だ。法人でも個人でも値段は一通りしかない。だから見積もりもない。誰が頼んでも値段は同じである。決済方法は代引き、銀行振込、クレジットカードなどだが、手形はない。すべてが「現金決済」である。「機屋をやっているときは手形があって面倒だった」ことが経験になっている。しかしその代わりというのもなんだが、「支払いをは請求書がきたら一時間以内に決済する」とのことである。それは取引先にとってとても大きなことである。

支払いのよい取引先を優先するのがビジネスの原則なので、この会社はとても信頼されているだろうことは容易に想像できるのである。もっともそのことはどこの会社でもわかっていることなのだが、資金繰りの関係からなかなかできないのが実際なのだ。

「朝注文があったら、
その日に送る」
という柔軟な対応が大切

さて、ここで吉村さんの「こだわり」の中身をのぞいてみよう。大切なのは注文者のニーズの理解である。視聴する部屋の大きさ、主にどのようなものを観るのか、視聴する距離、天井の高さ、DVDかパソコンからか、それともテレビからが中心か、といった条件を聞いてから品物を勧めることにしているそうだ。

難しいのは「平面性」「色のり」「明るさ」といったことを満足させることだが、生地を薄くしてハリをもたせ、長くなってもパイプがしならないようにといった工夫で克服したとのこと。

もちろんフルハイビジョン対応だが、現在の生地は生地メーカーと相談して二年前に開発したもの。使い方にもよるのだが「寿命は一○年くらい。」もちろんタバコを吸う部屋とか、油なども困る。

こういう製品開発で活きるのが、かつての仕事の経験である。「絡み織り」というニットに似た織物を洋服用に織っていたし、薄い絹織物で夏の衣服用の「絽」なども織っていた。「そうした技術的な経験がみな役に立っている」というのである。

なるほど、福井県はかつて織物の産地だった。吉村さんのお父さんが始めた「機屋」もその一翼だった。遺伝子といったらよいのだろうか、伝統のひろがりの一種であることはまちがいない。

またユーザーの意見や声を積極的に聞き出しながら「開発して製造して営業して、発送して・・・」とすべてやっているが、その蓄積は大企業に参入されたとき資金力以外のところで対抗力を付けるのに欠かせないことであろう。いまのところ「スキ間産業」なので大手が入ってくる様子はないにしてもである。

ところで、もう一つ大切なことは「特注」に柔軟に対応することだそうだ。例えば短納期であること。「朝注文があったら、その日に送る」というのである。

いいとき、忙しいときにこそ
努力して、新商品を
開発しなけば下降線をたどる

もう一つ進めている取り組みを紹介しよう。それは工務店との提携である。「この工務店に頼んだら最初からホームシアターの設備を備えることができる」といった売り物をつけること。実際これがけっこう受けているのである。あるいは家を建てるとき、窓がそのままスクリーンになる「シアター・ウィンドー」といったものもいま考えているそうだ。

このように吉村さんと話していると、次の一手あるいは研究・開発アイデアが次々でてくる。そこで筆者は吉村さんに、近年ぱっとしない福井地域の地場産業に関する意見を聞いていた。主に繊維と眼鏡産業である。

「織物がだめなのは仕方ないですね。研究・開発なしで、他人と同じことをしていたり、海外の品物と同じものを作っていたら競争になりません。眼鏡も同様で中国製品とは別のものを作らないと。例えば、眼鏡を作る機械の件で、鯖江市のものと同じ機械を中国に売るのはけしからん、といった声がありましたが、それはおかしいのです。どんな産業でも自分で工夫してサービスの差別化を図って当然です。とくにいいときにこそ努力しないとダメですね。繊維も眼鏡もよいときがあったのですから。下降線に入ってからの転換ではなく、忙しいときにこそ新製品を開発しませんと。農業だってそうですよ。減反を止めて輸入を積極的にすれば自然と落ち着きますよ」

もう一つ致命的だと思える会社のこと。「名刺を交換したとき、メールアドレスのない人がいる。それと製造業なのにホームページがない会社」。なるほどまったくである。それは自らビジネスチャンスを放棄しているに等しい。

吉村さんは効率の良い製造工程を考え、工場を拡張した結果、売り上げは増えているのだが、吉村さんを入れて四人の陣容で、三時ごろになると仕事が終わってしまうという状態になったという。だからとりあえず人手は足りている。しかし今年はあえて二十八歳の若者を採用した。

なるほど人材は採れるときに採っておくのが原則だ。今日のように急速な景気後退期はどの企業も採用を手控えている、こういうときこそチャンスなのである。

「良い会社」というのは
規模の大小と無関係に
付加価値生産性の高さがある

吉村さんはいま「大画面のホームシアターのことならなんでもわかるポータルサイト」を考えている。いいページを作れば人は集まるし何万人かのサイトになれば、大きな広告ページが作れる。

吉村さんがネットショップをスタートさせた八年前はまだショップは貧弱なものだった。しかしこの
八年間のユーザーからの質問の積み重ねは小さなものではない。さまざまなニーズが見えてきているのである。その一つが、補聴器の開発・販売であり、あるいは種類が多すぎるプロジェクターをもっとわかりやすいものにする、とかやるべきことはたくさんある。

吉村さんは地元の福井工業高等専門学校で学び、三○年前に卒業した。専門は弱電だったが、卒業して家電メーカーに就職。テレビの開発に携わったり、米インディアナ州でテレビの製造ラインの技術指導に行ったりとさまざまな経験をしたという。

そのさまざまな経験の中にホームページを作ったり、輸入代行を手がけたりといったことがある。吉村さんの言によれば「そうした経験の一つひとつがすべて役に立っている」とのことだが、きっとそうである。

この福井工専の卒業生は起業家が多いので有名だが、吉村さんもその一人である。

さて、これは筆者の印象だが、四人で二億六○○○万円の年間売上げというシアターハウスは、優良企業の典型である。「良い会社」というのは規模の大小とは無関係である。付加価値生産性の高さこそが決め手だ。筆者には利益率は容易に想像がつくが、実に素晴らし会社である。

吉村さんの事務所や住まいには、ホームシアターがあるのは当然のことだが、その他とても洒落た薪ストーブがあって、玄関のアプローチや階段そして居間など、最先端の設計で芸術的ともいえるつくりになっている。

快適な工場・事務所そして吉村さんの住まいを見ながら「成功するということは良いことだ」と思えるのである。


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